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絶対貧困−世界リアル貧困学講義/石井 光太

 新年1番に読んだ本です。

 

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

 

 

このようなテーマの本を最初の本にしたくなかったというのが本音なのですが、2014年のやり残しを消化するような気持ちで読みました。

 

貧困が主題の本は、貧困しており可哀想だという話を紹介されるというイメージがあったので、今まで読まなかったのですが、実際に読んでみると、淡々と筆者が体験した現実が紹介されており、そのような感想は抱くことはなかったです。

 

スラムの成り立ちや貧困の種類、路上生活や恋愛、婚期、出産から葬式までの生活の様子、物乞い、ストリートチルドレン、売春問題など様々な視点から貧困について説明されています。

 

この本で最も印象に残ったのはストリートチルドレンの話です。

 

ストリートチルドレンには守ってくれる保護者がおらず、警察にも守られない。誰からも必要とされていない。誘拐されて戦線に兵士として誘拐されることよくある。逆に自らから傭兵として、戦争に参加するストリートチルドレンがいる。戦争へ参加すれば、一般庶民以上の報酬がもらえて、組織の中では一人の人間として扱ってもらえる。ただの使い捨ての兵士として扱われていたとしても、彼らからすると初めて人間扱いされ、頑張れば頑張るほど、それを見てくれる人がおり、評価される環境。そのような環境が兵隊しかない。

 

大学生の頃、数年ぶりに母校(高校)へ訪問し、高2のときに担任だった先生が言っていたことを思い出しました。大学生は大量の時間はあるけど、お金がないので、自分のしたいことにその時間をつぎ込める人は多くない。アルバイトをしてお金を稼ごうとするけど、そのアルバイト先で、頑張ればお金がもらえ、アルバイト先の人に評価される。普段の学生生活で他人に評価されることがないので、それが嬉しく、自分が学生であることを忘れて、アルバイトに没頭して、本来したかったことを見失うことはよくある。その様子を「学生の搾取」と表現していたのが印象的で今でも覚えています。それで大学を中退した教え子がいたようで怒っていました。正直、学生自身にも問題があるだろうとは思ったけど、それは別のお話ですね。

 

お金がないから、カロリーの高いチキンを食べ、野菜を摂らない。ビタミンは錠剤で補う。貧しいのに肥満が多くなる。貧困によって生じる早死にしやすい肥満 。

 

子供がたくさん生まれると生活苦になるという認識はなく、路上生活者は既に貧しい生活を送っており、子育ては既に生んだ子どもがするので出産にためらいがない。5,

6人生んでていても珍しくはない。

 

物乞いのヒエラルキー、レンタルチャイルドチルドレン、迷信がエイズの拡大の要因になるなど、読んでいて面白い本でした。

 

ところどころにその日暮らしの生活が書かれており、生きる意味や働く意味、やりがいなどを考えられる余裕がある社会は、それだけで価値があるなと思いました。